眠りにつく夢

「眠りにつく夢を見たんです」

「それはただ眠っただけでは?」

「起きる夢はよく見ますよね」

「あるね、起きて支度をしている、と思ったら夢だった」

「遅刻ですね」

「何とか間に合わせるよ」

「努力家ですね」

「僕らはスケジュールに管理されている」

「という夢を見たんですか?」

「夢ならどんなに良かったか」

「なにかの歌詞ですか」

「それっぽくなってしまって恥ずかしいよ」

「眠りにつく夢はとても幸福でした」

「そういう話だったね」

「とても幸福、それ以上はありません」

「じゃあなんで話し出したんだい」

「幸福を共有することは世界平和ですから」

「本当はそんな夢見てないんじゃないの?」

「バレてしまいました。ただあなたと会話をしたいと思いました」

「それは喜んでいいのかな」

「どうでしょう。あなたは今日死んでしまうわけですけれど、最後に少し、世界平和に貢献しませんか」

「変な宗教みたいだ」

「死神協会に勧誘しています」

「本当にそうなのか」

「時給はそれほどですけれど、悪いところではありません」

「そんな未来もいいね」

「ええ、未来があるのです」