雑記

フィクションの夜

「楽しい?」と聞かれたので「うん、楽しいよ。」と言って微笑んだ。簡単だ。表情筋を意識する。

「もう少し彼に興味を持ってあげなよ。」と言われたので「そんなの私の勝手でしょ。」と答えておいた。本当に余計なお世話だ。

「夜は何を食べる?」と彼が聞く。考えるふりをして、音声を出力。「イタリアン、とかかな。」ついでに口角を上げておいた。

「彼は君のそういうところ気づいてると思うけど。」と、また口を挟まれた。「私だってわかってる。彼がわかっていることも。つまりそういうことよ。」表情筋を使わなくていいというのは楽だな、と私は思った。

「それはそれは。なんというのか、虚しくないの?」

私は彼の言葉を無視した。けれど少し面白くなって、彼の方に顔を向けて微笑んだ。「お腹空いたね。」

無視はひどかったかな、と少し思ったので呟く。

「これが愛よ。」