詩の断片

 

 

悲しみや絶望はいつも同じ色でわたしの
横をすり抜けていく
存在を認めて、その上で、やわらかくな
めらかに弾く
個々に色があることをわたしは知ってい
るのだけれど、フィルターとそして眼鏡、
わたしのための

 

***

 

つくりものの街、整列、正しく綺麗に清
らかに、排除していく

かろうじて土の匂いを残してみました、
木を植えてみました、名前、覚えられな
い、名札つきの木

そこに生活を押し込んで、人は人であっ
ただろうか
無人の鉄道、ガタガタ、ジェットコース
ターのように走り出す、人間みたいなも
のを乗せて

いつか廃墟になれば私が愛してあげるよ

 

***

 

ただの情緒不安定を飼い慣らせない少女
の夢は死
手近な不幸はリアルで逆に現実味を帯び
ない
遠くの絶望と誰かの死を、思って、想っ
て、歪んだ恋煩い
傾倒の先に望みはない
目を覚ましたときに広がっている青空が
ひどく暴力的で、正反対の生で、崩れ去
ることもできずに、ただ立ち尽くした朝

 

***

 

湿ったコンクリートに立ち並ぶ顔のない
幽霊のような建物を僕らは愛して、何者
でもないことへの安堵、透明な幸福、雨
が降って、水溜まりに反射する信号の光
を、わざと滲ませる、そうして切り取っ
て、海に放流するのです

 

***

 

誰もいない公園の落ち葉、想像上のボー
ル、頭の中でブランコを漕いで、ノスタ
ルジーを弄ぶ、見上げたら生活が、色の
ないように僕には見えたけれど、きっと
ただの勘違いだ。溢れ出るほどの普通が、
そこにあってくれればいい。誰もいない
公園。